未利用地等におけるヤギの放牧利用と生産物販売の可能性
イマイ アキオ
○今井 明夫(全国山羊ネットワーク)
Key words: goat grazing, unutilized zone,
marketing of goat products
【はじめに】
大規模化とグローバル化を旗印にした日本農業の近代化は経営担い手の不足による高齢化と中山間地の耕作放棄、里山への害獣の広がりなど農業と農村の崩壊につながるような状況もみられる。
そうしたなかでも未利用地等においてヤギを放牧して豊富な草資源を利用したヤギ乳の生産と販売を事業化している事例がある。それらを紹介するとともに生産物販売の可能性について検討したい。
【放牧事例:福井県池田町 Takaraヤギ工房】
福井県東南部の山間地に位置する池田町は小規模の棚田水田が多く、畦畔の草刈りが重労働のうえにイノシシによる農作物の被害が深刻になっていた。
1993年に神戸から移住した後藤さんは水田の受託耕作から農業経営を始めて2005年からヤギを導入して畦畔の草と川の土手草、林地放牧を行っている。電気柵を使用した経産ヤギの通勤放牧というユニークな発想で2007年にはチーズ工房を開設してヨーグルトギ舎(ビニールハウス)周辺から水田畦畔で放牧し、初夏には川の土手草、夏は山林の下草、秋には川の土手に戻るなど放牧地は季節によって変わるが、電気柵が有効に使われている。生産物は地元のスーパーや直売所の他にインターネットによる通信販売も行っている。
【ヤギ乳製品の評価】
北海道から沖縄まで、日本各地でヤギ乳製品の加工販売が行われているが、規模が大きいのは十勝の(有)ランランファームである。150頭のヤギを昼夜放牧し、そのヤギ乳から生産されたチーズはヤギ乳100%のフレッシュタイプ、シェーブル炭など放牧ヤギ乳本来の香りとさわやかな酸味が高く評価されている。価格は100g/840~970円である。
ヤギ乳は青臭いとかヤギチーズは臭いとかの先入観念を持つ人が多いが、乾燥した清潔な環境で飼育して搾乳したヤギ乳は風味がよく飲みやすいものである。
ヤギ乳製品の生産販売を目指して富山県、群馬県、栃木県、岡山県等でヤギ牧場が広がりつつある。
【ヤギ肉料理の評価】
日本の山羊肉については沖縄県の伝統料理が有名であるが独特の強い匂いが若い世代に受入れられないことが多い。台湾ではオスヤギは去勢して若齢肥育し、認定された山羊肉料理店が多彩なヤギ肉料理を提供してくれる。ヨーロッパではヤギ肉は高級食材として評価されており、ヤギ肉の加工調理法の普及啓発によって国内のヤギ肉需要を掘り起こすことを期待したい。
【ヤギ乳・ヤギ肉の生産拡大の障害】
乳等省令で1951年に定められた殺菌山羊乳の成分基準(乳脂率3.6%、無脂固形分8.0%)が飲用ヤギ乳販売の障害となっており、2009年からその改正を要望しているが進展していない。
都府県の食肉センターはBSE問題以降、反芻家畜であるヤギの屠畜解体を拒否しているところが多く、遠距離の輸送による処理を余儀なくされているので、食肉処理施設の改善を要望していきたい。
Goat
Grazing on the Unutilized Zones and the Marketing Possibility of Goat Product
Imai
Akio (All Japan
Goat Network)
*E-mail:
a-imai@echigo.ne.jp
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