2010年8月1日日曜日

『生きものを教える』

今井さんがバイブルとされている本『生きものを教える』(兼松仁郎・著)、その基礎編のまえがきより。


「コメを知っていてもイネを知らぬ農家の子がいると聞いて驚いたのは、もう10年ほども昔だった。子どもたちは海も山も森も畑や田も、ただ見ているだけで何も知らない、知らされてもいなければ、知ろうともしない。(中略)


 ・・・子どもたちは、見れども見えすどころか見もしない。食えどもその食べものを知らず、朝っぱらから一年坊主があくびをし、腰をかけさせればおへそが天井を向く。
 自然から切り離され、イキモノやモノ、そしてヒト離れまでしてしまって、子どもたちは、もう心だけでなく体までおかしい。大人もおかしい。政治や文教の当事者たちがおかしいだけならまだしも、頼りにすべき学校の先生たちもおかしい。自分自身ももうわけが分からず、きっとおかしくなっているのだろう。みんなほとんど病気だ。


 だが人間は考える葦だ、理性の存在だという。混沌の時こそ冷静に客観的にものを見て、合理的に思考を総合しなければならぬ。そう教えてきたのは他ならぬ科学だった。ならば、自分や子どもの体、心、くらしを、できるだけ科学的に見つめ直してみよう。科学など学びにくい感じもするが、どう学ぶのがよいかも学べばよい。何といっても自分たち、子どもたち、人間たちの崩壊の危機だから、ヒトのイノチ、イキモノを考え直してみよう。そういう科学をやってみよう。(後略)」


『生きものを教える 基礎編 ー生物教育の転回軸ー』兼松仁郎・著
農山漁村文化協会 昭和62年2月




 

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