2015年6月23日火曜日

ヤギ飼育 Q&A

2015年6月20日

今年の「ヤギのいる学校」は、新規の学校4校を含めて17校、
さらに、絵本と木の実の美術館です。

ヤギ飼育の現場では、毎日さまざまなことがおこります。
よくある質問に今井さんが回答されているので紹介します。


Q1:子ヤギにどんなエサをどれだけやったらよいでしょうか。

Ans:ヤギは草食動物ですから基本的なエサは草類です。
学校周囲の野草や野菜の残りものを大まかに切って与えます。
雨に濡れた草はピロテイーに広げて少し水分を落としてから
与えます。
これから梅雨になると野草を用意できないこともありますので、
乾牧草(アルファルファまたはチモシー)を
農協から購入するのですが、
購入量が少ないので近隣の畜産農家から分けてもらうほうが
よいでしょう。
用意する配合飼料もヤギ1頭1日の給与量は
200~300gくらいに制限してください。
飼料全体の1日給与量の目安は乾物量で体重の3~4%です。
体重20㎏の子ヤギでは1日800gの乾物量を食べるのですが、
干し草を400~500gに野菜くず1kg(乾物200~300g)、
配合飼料200gを1日のおおまかな量と思ってください。
汚した草は食べないから、無駄が出ないようにエサ箱の工夫が必要です。
里公小学校では学校周辺の野草や野菜くずをうまく保存して
給与しているので参考にしてください。

周辺ではスイセン、アサガオ、ジャガイモ、アジサイ、
ヨウシュヤマゴボウ、キツネノボタン、など有毒植物を調べておいて
食べさせないようにしてください。

Q2:子ヤギの軟便と下痢について

Ans:子ヤギが軟便になる原因はいくつかありますが、
環境の変化によるストレスで体調を崩すとコクシジウムという
腸管内寄生虫が活発になって腸壁の水分吸収を妨げることが
考えられます。
診療所の獣医さんに糞を持って行ってその場で検査してもらい、
コクシジウムを確認したらサルファ剤(ダイメトン粉剤または
エクデシン液剤が一般的に処方されます)を3~4日継続して
飲ませてください。
市販のビオフェルミン下痢止めを買って一緒に飲ませます。
軟便は3日くらい続くこともありますが、
食欲のあるうちにコクシジウムをなくすることで、
衰弱せずに回復します。
獣医さんに検便してもらうことをまずやってください。

Q3:熱中症対策について

Ans:子ヤギはまだ体温調節がうまくできないので、
日当たりに長時間置くと熱中症になります。
日陰で風通しの良いところが必要です。
西日の当たるヤギ小屋は黒い寒冷紗で覆ったり、
すだれを下げることも有効です。

熱中症になったら日陰に運んで体温を下げることが大事です。
シャワーで水をかけたり、首筋に保冷剤を当ててやります。
冷たいスポーツドリンクを飲ませることもよいでしょう。


2015年6月17日水曜日

ヤギの入学式

2015年6月17日

「ヤギの入学式」が続き、今年度も「ヤギのいる学校」の活動が
次々に始まっています。

「ヤギのいる学校」のご指導やお世話をされていらっしゃる今井さんから
ヤギの入学式をひかえた小学校へのお便りを紹介します。



子供たちと会えるのを楽しみにしています。
当日はぜひ時間の取れる保護者にも参加していただき、
管理員さん保護者の有志で作ったヤギ小屋のお披露目をして、
地域のシンボルしてのヤギの入学をお祝いしたいと思っています。
子供たちからヤギの質問が出た時に私は次のように言います。
答えは与えずに子供たちに宿題とします。

「ヤギの健康な状態はどうやってわかるだろう?」
「ヤギが元気でない時はなにをしてやったらいいのかな?」
「ヤギが食べてお腹をこわしたり、死んでしまうこともあるよ、
 それは何?」

子供たちはヤギの飼育体験からたくさんのことを発見します。
興味を持ち、知りたいことが山ほど出てきます。
そんな時が学習の動機づけのチャンスと考えてください。
人に相談したり、自分で調べたり、調べたことをまとめて
伝えようとします。
それらのすべてが自主的な学習の芽生えです。
1年生は4月生まれと3月生まれでは1年も違うのです。
理解できることも大きな差があります。
考えたりする時間を待ってあげる必要があります。
学級通信では子供たちがヤギから発見したこと、
みんなで相談したことなど
絵や作文などで地域のみなさんにも紹介すると
地域のヤギが根付きます。
入学式当日、体温計と手洗い消毒を用意してください。

今井明夫
今井農業技術士事務所/今井農園(動物取扱業)

2015年6月10日水曜日

ヤギのエサについて

「ヤギのいる学校」の入学式やその後のフォローアップで
今井明夫さんは大忙し。
今井さんから小学校へのアドバイス情報を紹介します。



「ヤギのエサについて」

ヤギは草食動物ですから基本的なエサは草類です。
学校周囲の野草や野菜の残りものを大まかに切って与えます。
雨に濡れた草はピロテイーに広げて
少し水分を落としてから与えます。
これから梅雨になると野草を用意できないことも
ありますので、乾牧草(アルファルファまたはチモシー)を
農協から購入するのですが、
購入量が少ないので近隣の農家から分けてもらうほうが
よいでしょう。
用意する配合飼料もヤギ1頭に20kgは多すぎるのですが、
1日給与量は200~300gくらいに制限してください。
飼料全体の1日給与量の目安は乾物量で体重の3~4%です。
体重20㎏の子ヤギでは1日800gの乾物量を食べるのですが、
干し草を400~500gに野菜くず1kg
(乾物200~300g)、配合飼料200gを
1日のおおまかな量と思ってください。
汚した草は食べないから、無駄が出ないように
エサ箱の工夫が必要です。
里公小学校では学校周辺の野草や野菜くずを
うまく保存して給与しいるので参考にしてください。

今井明夫

子ヤギの下痢について

今井明夫さんからのメール情報
「子ヤギの下痢について」

子ヤギが軟便になる原因はいくつかありますが、
環境の変化によるストレスで体調を崩すと
コクシジウムという腸管内寄生虫が活発になって
腸壁の水分吸収を妨げることが考えられます。
サルファ剤(ダイメトン粉剤またはエクデシン液剤)を
3~4日継続して飲ませ、市販のビオフェルミン下痢止めを買って
一緒に飲ませます。
軟便は3日くらい続くこともありますが、
食欲のあるうちにコクシジウムをなくすることで、
衰弱せずに回復します。
餌はアルファルファ乾草か、チモシー乾草(ウサギ用に
ホームセンターで売っている)の上質の物を300~500gと
生草を1~2kg給与しますが
この時期はヨモギや桑の葉、桜の枝葉を喜んで食べます。
経過によっては獣医さんに診療してもらいますが、
サルファ剤を飲ませたことは報告してください。
 

ヤギの入学式@絵本と木の実の美術館

2015年6月6日(土)

今井明夫さんからのご報告を紹介します!



昨日はヤギの入場時刻から晴れてくれて良かったです。
たくさんの人達から、喜んでもらえて
本当に素晴らしい入学式でした。
祖母ラッキーから母ララ、ヤンママのしずか、
そして子ヤギのゆきにつながるいのちのリレーを
絵本にできるとうれしいと思っています。
田島さんとのトークショーでは羽目を外してしまったかもしれませんが
お許しください。
夕食もとてもおいしくごちそうになり、お礼を申し上げます。

しずか入学式&対談イベント

出 演 今井明夫(全国ヤギネットワーク代表)×田島征三
日 程 6月6日(土)入学式14:00~ 対談15:00~
鉢集落をはじめ越後妻有でも昔は多くの家庭でヤギを飼育していました。現絵本と木の実の美術館である旧真田小学校でも、ヤギの「ゆきちゃん」を飼育していました。「ヤギが暮らしやすい環境は人間の暮らしやすい環境」と唱えるのは、全国ヤギネットワーク代表の今井明夫さん(新潟県三条市在住)。全国の小学校にヤギの入学を進め、ヤギのいる生活の豊かさと大切さを発信しています。

(絵本と木の実の美術館ホームページより)

絵本と木の実の美術館の最新情報は、こちら

2015年6月2日火曜日

「小学校における動物介在教育とヤギ飼育」その2 今井明夫

2015年5月

今井明夫さんの「畜産技術士センター」掲載用原稿の一部を
紹介します。
総合的学習における家畜飼育の意義 についてです。
「ヤギのいる学校」について、個々の事例報告に加え、
生活科と総合学習においての意義について説明されています。



総合的学習における家畜飼育の意義

平成14(2002)から本格的に導入された総合的な学習の時間は、
自ら学び自ら考える力などの「生きる力」をはぐくむために、
既存の教科学習の枠を超えた横断的・総合的な学習となることを
目指している。
平成20(2008)の指導要領の改訂では「体験的な学習」に加えて
「探求的な学習」を充実することを目指すとされた。
探求的な学習については「問題の解決や探究活動の過程において、
他者と協同して問題を解決しようとする学習活動や、
言語により分析し、まとめたり、表現したりするなどの学習活動を行う」、
「社会的な体験、生産活動の体験、実験や調査活動、発表や討論などの
言語学習活動を取り入れる」ものとしている。

(1)総合的学習の目標
総合的な学習の時間の目標は、
) 横断的・総合的な学習や探究的な学習を通すこと、
) 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、
    問題を解決する資質や能力を育成すること、
) 学び方やものの考え方を身に付けること、
) 問題の解決や探究活動に主体的、創造的、
    協同的に取り組む態度を育てること、
) 自己の生き方を考えることができるようになること
の五つの要素で構成されている。
(小学校学習指導要領解説、文部科学省平成208月)

(2)ヤギ飼育と総合的学習の視点
低学年の生活科におけるヤギ飼育活動から発展して総合的学習で
「自分たちの食と健康」、
「地域の中の生き物のつながり」、
「動物の再生産(繁殖)とそのいのちを食する人間」、
「いのちの連鎖(大地→植物→動物→人→大地)」、
「環境問題と世界の食糧」、
などさまざまに総合的な学習の課題設定は可能である。
しかし、
あくまでもその学年の児童たちが主体的に課題を見つけ出すように
動機づけをしてやることが大切で、
教師が決めた課題を児童が分担して調査して、
調べたことをまとめて発表するだけでは、
総合的な学習の時間の前提である「主体的な学び」にはならない。
低学年でヤギ飼育を体験した児童は、
ヤギが自分と同じ哺乳動物であり、
成長して雄と雌が交配することで受胎して
一定の妊娠期間を経て分娩し、
子育てをする有様をすでに学んでいる。
人間が植物を改良して「作物化」するとともに、
野生動物を「家畜化」することで狩猟による食料確保から
定住生活へ進化したことを理解することができる。
現実の自分たちの食料がどの国で生産されて、
どのような流通経路で食卓に並んでいるかを知ることは
極めて重要であり、
日本の食料自給率や食品廃棄物の問題、
さらに日本が輸入する食料や飼料が、
経済的に貧しい開発途上国の子どもたちの栄養や健康を
奪っていること事実である。
日本人の食料の60%が輸入されていて、
家畜飼料の大部分も輸入に依存している我が国の
畜産のあり方はこれでよいのかと問うことも必要である。

ヤギの飼育を通してエサの確保の苦労を体験した子どもたちは、
自分たちの周りでどんなものが飼料として利用できるか、
無駄はないのか、食料の自給とは何を意味するのか、
などなど知りたいことが浮かび上がってくれば、
総合的な学習の課題抽出は容易にできるのである。

「小学校における動物介在教育とヤギ飼育」その1 今井明夫

2015年5月

今井明夫さんの「畜産技術士センター」掲載用原稿の一部を
紹介します。
生活科授業におけるヤギ飼育 についてです。
「ヤギのいる学校」について、個々の事例報告に加え、
生活科と総合学習においての意義について説明されています。



生活科授業におけるヤギ飼育


平成4年(1992)から本格的に実施された生活科授業は、
低学年児童が、より主体的に取り組める学習活動の場を
保証するために設置された総合的に学習する教科である。
生活科は、具体的な活動や体験を重視しており、
これは低学年児童の発達特性に配慮して、
一人一人の気付きを大切にしながら、
児童にやる気と自信を持たせることを重要視している。

(1)生活科がめざすもの
 現行の「学習指導要領」において、
生活科の教科目標は次のようになっている。
) 具体的な活動や体験を通して、
) 自分とのかかわりで身近な人々、社会及び自然に関心を持って、
) 自分自身や自分の生活について考えさせるとともに、
) その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ、
) 自立への基礎を養う、
という構成である。
 これに加えて上越教育大学の木村吉彦は、
「知的な気付きを大切にする」、
「多様な人々とのかかわりを重視する」をあげ、
生物や人(他者)とかかわる体験が、
低学年児童の人間形成に必要であるとしている。

(2)「生きる力」を育てる
産業と経済の近代化が進められてきた結果として出現した
高度産業社会は、現代の子供の遊びに「他者」の不在、
「なまの事物とのかかわり」の喪失が顕在化した。
すべてを管理された子供の日常生活や、
人工的、閉鎖的な生活環境に支配されているなかで、
「自然の中に生きている生物」の一部である自分を認識する
ことさえできない人間に作られていくのである。
前述の木村は、子供の生活世界の中に
「自己形成空間」を再生させることが重要であり、そのために、
①多様な「経験」の回復、
②心身の一元的な発達、
③協同性の回復をすべきだと指摘し、
「生きる手立て」を身に付けることが必要であると強調する。
(生活科の新生を求めて)

(3)生活科における家畜飼育の意義
小学校における継続的な動物飼育の意義としては、
) 親しみの気持ちが生れる、
) 責任感が育つ、
) 生命の尊さを体感する、
) 他者の立場に立った見方や考え方ができる、
) 気付きの機会が多く質が高まる、などがあげられる。

「生命尊重の教育」として動物飼育の意味は大きく、
) 動物のいのちを預かっていることの認識、
) 食べることと排泄することに休みがない。
) いのちの誕生と時には死に遭遇することもある、
) 飼育動物の分娩や子育てから「いのちのつながり」を学ぶ、
など、理科(生物)的な側面よりもさらに深い情操教育
もしくは道徳を学ぶ場が提供できる。
飼育する動物がペットのような小動物ではなく、
中型家畜であるヤギを飼育する場合は、
もっと幅広い教育的な意義がある。
児童とほぼ同じ大きさの子ヤギは、
子どもたちにとって仲間という存在であり、
毎日のエサやりや小屋掃除は大仕事で一人ではできないから
友達と一緒になって協働することが必要である。
世話をする時間はヤギとのふれあいが濃密になり、
さまざまな発見があり、
ヤギの健康状態などで疑問を見つけるとそれを調べたり、
相談したりして解決したいという気持ちが
自発的な学習につながっていく。
学校飼育動物の現状を見ると、
小動物は人が一方的に管理する理科的な観察動物
の側面が主体であるのに比べて、
ヤギの飼育は「気付き」の頻度が高く、知的興味を誘発する。
そこから調べや相談に発展し、自発的な学びの姿勢が生まれてくる。
さらに仲間や先生、保護者と「協働」して問題を解決しようとする
ことで児童の社会性を育てることにもつながる最適な教材である。
ヤギが草類を主食とする反芻家畜であって、
そのエサを探すことは健康維持に欠かせない。
市販の人工的な固形飼料で間に合わせるペットと大きな違いがある
とともに、自分たち人間の食料がどこでどのような過程を経て
生産・加工・調理されて食卓に上がるのか
にも関心を向けることができる。