2015年6月2日火曜日

「小学校における動物介在教育とヤギ飼育」その2 今井明夫

2015年5月

今井明夫さんの「畜産技術士センター」掲載用原稿の一部を
紹介します。
総合的学習における家畜飼育の意義 についてです。
「ヤギのいる学校」について、個々の事例報告に加え、
生活科と総合学習においての意義について説明されています。



総合的学習における家畜飼育の意義

平成14(2002)から本格的に導入された総合的な学習の時間は、
自ら学び自ら考える力などの「生きる力」をはぐくむために、
既存の教科学習の枠を超えた横断的・総合的な学習となることを
目指している。
平成20(2008)の指導要領の改訂では「体験的な学習」に加えて
「探求的な学習」を充実することを目指すとされた。
探求的な学習については「問題の解決や探究活動の過程において、
他者と協同して問題を解決しようとする学習活動や、
言語により分析し、まとめたり、表現したりするなどの学習活動を行う」、
「社会的な体験、生産活動の体験、実験や調査活動、発表や討論などの
言語学習活動を取り入れる」ものとしている。

(1)総合的学習の目標
総合的な学習の時間の目標は、
) 横断的・総合的な学習や探究的な学習を通すこと、
) 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、
    問題を解決する資質や能力を育成すること、
) 学び方やものの考え方を身に付けること、
) 問題の解決や探究活動に主体的、創造的、
    協同的に取り組む態度を育てること、
) 自己の生き方を考えることができるようになること
の五つの要素で構成されている。
(小学校学習指導要領解説、文部科学省平成208月)

(2)ヤギ飼育と総合的学習の視点
低学年の生活科におけるヤギ飼育活動から発展して総合的学習で
「自分たちの食と健康」、
「地域の中の生き物のつながり」、
「動物の再生産(繁殖)とそのいのちを食する人間」、
「いのちの連鎖(大地→植物→動物→人→大地)」、
「環境問題と世界の食糧」、
などさまざまに総合的な学習の課題設定は可能である。
しかし、
あくまでもその学年の児童たちが主体的に課題を見つけ出すように
動機づけをしてやることが大切で、
教師が決めた課題を児童が分担して調査して、
調べたことをまとめて発表するだけでは、
総合的な学習の時間の前提である「主体的な学び」にはならない。
低学年でヤギ飼育を体験した児童は、
ヤギが自分と同じ哺乳動物であり、
成長して雄と雌が交配することで受胎して
一定の妊娠期間を経て分娩し、
子育てをする有様をすでに学んでいる。
人間が植物を改良して「作物化」するとともに、
野生動物を「家畜化」することで狩猟による食料確保から
定住生活へ進化したことを理解することができる。
現実の自分たちの食料がどの国で生産されて、
どのような流通経路で食卓に並んでいるかを知ることは
極めて重要であり、
日本の食料自給率や食品廃棄物の問題、
さらに日本が輸入する食料や飼料が、
経済的に貧しい開発途上国の子どもたちの栄養や健康を
奪っていること事実である。
日本人の食料の60%が輸入されていて、
家畜飼料の大部分も輸入に依存している我が国の
畜産のあり方はこれでよいのかと問うことも必要である。

ヤギの飼育を通してエサの確保の苦労を体験した子どもたちは、
自分たちの周りでどんなものが飼料として利用できるか、
無駄はないのか、食料の自給とは何を意味するのか、
などなど知りたいことが浮かび上がってくれば、
総合的な学習の課題抽出は容易にできるのである。

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